85. 特許を受ける権利の確認請求(2)-時間との戦い

特許を受ける権利の確認請求訴訟の話も2回目になった。
前回は、確認の利益という観点からこの話題を取り上げた。
今回は、その確認の利益を、時間軸の中で考えてみよう。

特許を受ける権利の確認請求訴訟に訴えの利益が認められるといっても、いつでも認められるわけではない。
敵もいないのに、「誰かに盗まれたかもしれない」と疑心暗鬼になって訴訟を起こしても、裁判所から相手にされない。
訴訟を起こすからには、必ず特定の被告が必要なのだ。

では、「被告」となるべき相手が特定され、確認の利益が生じるのはいつか。
それは、誰かがあなたの発明を冒認出願したときだ。
といっても、通常は、出願は秘密裏に行われるので、あなたが事実を認識するのは、出願公開の時点になるだろう。

では、出願以前は、特許を受ける権利の確認請求訴訟は提起できないのだろうか。
そういう事例を聞いたことがないが、理屈の上ではダメだ。
確認の対象となる出願が特定できないからである。

では、まだ発明が盗まれた疑いがあるに過ぎない時点でどういう対応をすべきかというと、訴訟ではなく、特許出願である。
つまり、発明者なら、盗まれただの何だのといっている暇があったら、敵より先に出願すれば済むことなのであり、それで済むことなら、面倒な裁判をする利益はないのである。

というわけで、確認の利益が生じるのは、誰かがあなたの発明を冒認出願したとき、さらに現実的には出願公開のときということになると思われるが、では、確認の利益が消えるのはいつだろうか。
要するに 、もはや誰が特許を受ける権利の保有者かを確認しても紛争解決上意味がない、という状態になる時期だ。

これは、出願に対する処分が確定したときである。
典型的には、特許処分がなされたときだ。

特許が付与されると、特許を受ける権利は、特許権に変わってしまって消滅する。
消滅した権利が誰のものかを確認しても意味がない。
だから、確認の利益は消滅する。

また、拒絶査定が確定しても、

、もはや誰も特許は取れなくなるから、やはり確認しても仕方ない。
したがって、この場合にも、確認の利益は消滅する。

このように、処分確定で確認の利益が消滅することは、特許を受ける権利の確認請求訴訟をする上で、大きなネックとなってきた。
訴訟の途中でタイムアウトになるのだ。

特許を受ける権利の請求訴訟を提起できるのは、上述のとおり、通常は出願公開の後だ。
普通だと、出願公開後しばらく交渉を重ね、それが決裂して訴訟に至る、という流れであろう。

それから訴訟提起するのだが、いくら急いでも、訴訟提起には数週間から1ヶ月くらいはかかる。
そして、その後訴訟審理をするのだが、一般にこの種の訴訟は一筋縄ではいかず、判決までに1年程度は当然、場合によっては2年、3年とかかってもおかしくない。
さらに、高裁、最高裁と進んでいると、さらに1、2年くらいは平気で経ってしまう。
そうすると、 、その間に出願審査も進んで、特許になってしまうのだ。

特許になるとどうなるかというと、確認の利益がなくなる。
確認の利益がなくなるとどうなるかというと、訴訟は却下でお終い。
早期審査なんてかけられると、ひとたまりもない。

特許庁は、裁判なんて知ったこっちゃないから、待ってくれといっても待ってくれない。
結局、真の発明者は、泣き寝入りすることになる、というわけだ。
このように、特許を受ける権利の確認請求訴訟は、時間との戦いだったのである。

この状況、平成23年法で、ふたつの意味で変化した。
ひとつは、特許を受ける権利の確認請求訴訟が確認の利益を失って不適法になっても、新しく創設された冒認を理由とする移転登録請求訴訟に切り替えられるということである。

特許権を取り戻す訴訟は、従来からも解釈上認められるべきだという考えもあったが、裁判所は例外的案件を除いて否定的だった。
これができるようになったのだから、新制度は、真の権利者にとって福音といえるだろう。
特許を受ける権利の確認請求訴訟が却下されても、特許権を取り戻せば良いのだ。

もうひとつは、理論的な疑問が生じたことだ。
冒認を理由とする特許の移転登録請求を認めた平成23年法74条は、その請求権者を「特許を受ける権利を有する者」としている。
つまり、この新法は、特許になった後でも、特許を受ける権利は残っている、という建前を前提にしているのだ。

そうすると、特許になれば特許を受ける権利が消滅し、確認の利益も消滅する、という従来の考え方は正しかったのか、という疑問が生じることになる。
あまり考える実益はないが、従来、訴訟が却下されてきた人にとっては、少々恨めしい話かもしれない。

さて、最後に、「83.現行法下の対抗出願」で取り上げた問題との関連について述べよう。

第83回では、現行法のもとでも、冒認出願に自社出願で対抗する手段として、特許を受ける権利の確認請求訴訟によって冒認出願の出願名義を自分にし、取り下げてしまう、ということを考えてみた。
この方法によれば、今でも、何とかして、冒認出願を特許にさせないままに、特許を請ける権利の確認を受けることに対するニーズがあることとなる。
要するに、審査を止めなければならないのだ。

上述のとおり、特許庁は、待ってください、といっても待ってはくれない。
そこで、私が以前特許を受ける権利の確認請求訴訟を提起したときは、別の方法を採った。
前回書いたように、出願名義の変更は単独でできるのだが、そのことを応用したのだ。

具体的には、まず特許を受ける権利の確認請求訴訟を提起する。
その後、裁判所の受付印が押された訴状のコピーを添付して、特許庁に、早々に出願名義変更届けを提出する。
こんな届出を出したらどうなるかというと、特許庁は、出願名義変更届けが受け付けられた時点で名義変更の効力が生じると考えているようで、形式も整っている以上、無碍にはできない。
一応、中身に理由があるかを考えなければならないのだ。

といっても、訴状のコピーだけでは、果たしてその届出が正当なのかどうか分からない。
当然ながら、判決が出て、初めて、届出が正当かどうか分かるのだ。
そのため、特許庁としては、この段階では、名義変更届けを出した人を出願人と認めて、手続を進めるわけにはいかない。

かといって、それまでに冒認出願をした人を相手に審査を進めることもできない。
後日、名義変更届けを出した人が訴訟に勝って確定的に名義変更の効力が生じると、特許庁は、誤った相手に対して審査をしていたこととなってしまうからだ。

で、特許庁はジレンマに陥り、この時点で審査を止めるしかなくなったようだ。
おかげで、私は、ゆっくり裁判をすることができた。

この方法がずっと使えるのかどうかは知らない。
ただ、、、現行法のもとで対抗出願を実現したいと考えるときには一考の価値があるかもしれない。

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